僕がその恐怖を初めて味わったのは、小学生の時。
友達の家に遊びに行くと、友達が何やら変わったゲームをプレイしていた。
画面の真ん中に主人公と思しきキャラクターが1人ポツンと立っている。
でもBGMもなければ、敵もいない…
食堂と思われるやたら広い空間にただ時計の音と足音だけ響く感じが妙に不気味だった。
友達とプレイするつもりで持ってきたレースゲームのソフトを放り出し、僕はすっかりその画面に釘付けになった。
画面のキャラクターは時折壁に向かって走ったり、その場でグルグル回ったり、何やら変わった動きをしながら扉を開けて奥に進んでいく。
そして ”それ” との出会いは、唐突に訪れる…
当時小学生だった少年にとって、その ”出会い” はあまりにも衝撃的過ぎるものだった。
もう人ではない ”それ” が振り返った瞬間、あまりの恐怖に思わず叫び声を上げ、そこからもう画面を見る事ができなかった。
あの ”人ならざる者" と目が合った瞬間が、頭から離れない。
日も早く沈むようになり薄暗くなった帰り道を、少年は恐怖で泣きながら何度も後ろを振り返り、激チャで家まで帰った…
あれから20年以上が経ち、そんな少年もすっかりおっさんに…
あの衝撃的な ”出会い” 以来、すっかりバイオハザードにはまってほとんどのシリーズをプレイしてきた。
だが、そんなバイオハザードも時代と共にその様相を変えていくことになる…
当初ではサバイバルホラーでの謎解き要素が強かったが、4からはアクションシューティングの要素が強くなり、6にもなるとホラーの要素はほとんどなくなってしまった。
やがて ”それ” の存在も「ガナード」「マジニ」と呼ばれるクリーチャーに取って代わり、彼らのゲームでの扱いはもはやヘッドショット一発で死んでしまう、いわゆる「弾薬補給係」…
近頃ではUSJなどのテーマパークにも ”それ” は「ゾンビ」と呼ばれて現れるようになり、若い子たちから黄色い声をあげられる始末…
あの時の ”人ならざる者” の恐怖は、少年の中からすっかり消えてしまっていた。
そんな時、バイオ2のリメイク作品となる「バイオハザード RE:2」の発売が発表される。
大好きなバイオシリーズだったので、とりあえず予約購入まではしていた。
だが、あの頃のサバイバルホラーとしてのバイオが好きだった自分としては、中々気が乗らず実際にはプレイをすることなくただ時間だけが過ぎていった…
そんな時、「バイオハザード RE:3」が発売されるのを知り、PS4にインストールされたままになっているRE:2の存在をふと思い出す。
気が付けばRE:2の予約購入から既に1年近くが経つ…
ホコリを被ったPS4の電源を入れ、ホーム画面の外に追いやられたRE:2のソフトを起動する…
「オリジナル版はやっとるし、とりまヘッドショットしとけばいいんでしょ?」
もはやバイオシリーズに、あの時の恐怖は期待していなかった。
そう、もう今のバイオに ”それ” はいないのだ…
主人公にレオンを選択して、難易度はSTANDARD。
ムービーがとても綺麗で、オープニングで既に別ゲームのように感じる。
ガソリンスタンドからのスタート。
この段階で既にオリジナルと違い、少し戸惑う。
スタンドの奥からうめき声が聞こえる。
音のする方へと進み、扉を開ける…
すると扉を開けた先に、”それ” はいた。
その ”人ならざる者” は、よりリアルになって再びバイオに返ってきていた。
目が合った瞬間、自分の中にあの時の恐怖が蘇ったのが分かった…