生きてはいない、ただ死んでないだけ

ただ「死んでない」だけの誰得なブログ

死闘2

フィルムの箱を開封し、中身を確認する。

 

まずは保護フィルム本体。

 

フィルムの粘着面は2枚のシートで覆われている…

どうやら先に上側を剥がして張り付けた後、下側を剥がしながら張るタイプのようだ。

 

付属品はゴミ取り用のシール、アルコールティッシュ

そして見慣れない小さな厚紙のような板が1枚。

 

説明を見るとこれは ”奴ら” を押し出すためのヘラらしい…

この ”秘密兵器” は、ここぞという時に使えそうだ。

 

それなりの値段をしただけあって、初期装備はしっかりしている。

 

戦いを前に何度もシミュレーションを行い、フィルムと液晶との位置関係を最終確認する。

戦いの準備は整った…

 

このシートを剥がせば、もう後戻りはできない…

深呼吸してゆっくりとフィルム粘着面の上側のシートを剥がす。

 

戦いの火蓋が切って落とされた。

 

液晶画面の上部と平行になるように、粘着面を接地させる。

カメラとフィルムの穴の位置関係も問題ない。

そのまま粘着面を液晶に張り付けていく…

 

周辺にいくらか侵入を許したが、このエリアは言うなれば戦場の最前線…

「三の丸」でのドンパチなら、これまでの戦いで何度も経験済みだ。

 

どうということはない。

 

肝心なのはここから。

「本丸」となる液晶の中心部分をいかに守れるかが、この作戦の成功にかかっている。

 

下側のシートを剥がし、フィルムの粘着面が完全に露わになった。

 

まずは「二の丸」への侵入を最小限に抑えなければならない。

 

息を殺しながら…

 

ゆっくり…

 

ゆっくり…

 

慎重にフィルムを貼り進めていく…

 

 

 何とかフィルムの3分の2程まで進んだ。

 

 

ホコリが舞わないように細心の注意を払いながら、1度大きく息をする…

 

フィルムの位置もシミュレーション通り…

液晶との位置関係は完璧だ。

 

だが、「二の丸」に思った以上の侵入を許していた。

 

このまま貼り終えて、最後に力ずくで押し出すか。

いや、無理に力を加え過ぎるとフィルムに痕を残す危険がある…

 

そうなれば ”奴ら” の思うツボだ…

 

どうする…

 

その時、あの ”秘密兵器” の存在が頭をよぎった。

 

そうだ、あれを使えば ”奴ら” を一掃できる…

 

位置関係の黄金比を崩さぬよう慎重にフィルムを剥がす…

 

フィルムに折り目が付かぬよう…

 

慎重に…

 

慎重に…

 

「二の丸」まであと少し…

 

ようやく侵入体が外に吸い出されるように姿を消した…

 

”秘密兵器” をフィルムにセットする。

 

いける…

 

もはや、迷いはなかった。

 

ブルドーザーの如く、ヘラで押し出していく…

 

そのまま、一定の速度でホームボタンまで貼り進んだ。

 

勝った…

 

あとは周辺に残った”奴ら”を押し出すだけ…

 

 

 

 

そのはずだった。

 

 

 

 

気が付くと「本丸」目前に ”奴ら” の大群が…

 

これこそ気泡の恐るべき力、「分裂」である。

ヘラによって圧力が分散したせいで、分裂を繰り返した気泡は大群を形成してしまっていたのだ。

 

 

「このヘラ、全然使えんやん…」

 

気泡の反撃がついに始まった…