新たな獲物を見つけた ”捕食者” がゆっくりと立ち上がる…
さっきまで夢中で喰らい付いていた ”食事” にはもはや目もくれない。
どこか気怠そうな…
それでいてしっかりとした足取りは、着実に新たな獲物に歩みを進めていた。
この動き、声、雰囲気…
そこにいたのは紛れもなく、あの時の少年に衝撃と恐怖を与えた ”それ” だった。
あの恐怖がバイオハザードに再び帰ってきた。
久しぶりの感覚と嬉しさに思わずコントローラーを握る手に力が入る。
思わず後ずさりしながらも、L2ボタンを押して銃を構える。
ゆらゆらと力なく揺れる頭部に狙いを定め……
引き金を引く…
乾いた銃声と共に血飛沫が飛び、”それ” の上体が大きく後ろにのけぞった。
倒れる…
バイオハザードを長くプレイした者なら誰もが覚える、この感覚…
やり込みで幾度となくタイムアタック、Sランククリアに挑む中で身体が覚えた、いわば生き残るための「確信」。
ボタンから指を離し、レオンが構えを解いた…
しかし、その「確信」はすぐに「過信」に変わる事になる。
倒れたはずの ”それ” は体勢を立て直し、さらにこちらに近づいて来る。
慌ててボタンを押し、銃を構える。
近づいてより鮮明になった頭部に狙いを定め、もう一度引き金を引く。
再び銃弾がその頭部を捉える…
着弾の衝撃で上を向いたものの、”それ” がもう歩みを止めることはない。
慌てて撃った三発目が外れる。
動揺して元々下手だったエイムが余計に定まらない…
”それ” がゆっくりとこちらに手を伸ばす。
やられる…
無我夢中で撃った4発目が頭部をかするように命中し、ようやく後ろに倒れた。
「倒れた…」
安堵の吐息と共に言葉が漏れる…
奥へと進み、倉庫の鍵を入手する。
クイックターンのコマンドを確認し、鍵のかかった扉へ向かった。
4発消費して弾は残り6発…
ヘッドショットで3発となると、多くても倒せるのは2体……
そんな考えを巡らせていた時、ヘッドホンから聞こえた音に思わず足を止めた。
聞き覚えのあるかすれたうめき声……
「難易度STANDARDなのに…そんなバカな…」
倒したはずの ”それ” は、再び目の前に立っていた。